2017年3月1日

【平松陽一】組織を動かす経営計画 22

組織を動かす経営計画


22.百年かけて生き残る

昨今の経営者がもう一つ思い切った投資に踏み切れない背景に、
東京オリンピック後経済情勢がどうなるのか分からないというものがある。

ここで危機感をあおる気はないが、現実に目を向けて縮小市場の中で
どう立ち振る舞うかを考えなくてはならないだろう。
そのためには、老舗の経営を参考にすることが役に立つ!

衰退する市場の中で、100年かけて縮小し生き残った企業がある。
鳥取県日野郡にある下備屋近藤家である。近藤家の起源は、
1779年(安永8年)近藤喜兵衛にある。以来200年以上に亘る事業の拡大、
そして後半は縮小、撤退は一業種を徹底して維持してきた経営のあり方を感じさせる。
近藤家は“たたら”に関する事業を一筋に行ってきた。

宮崎駿監督のアニメ映画「もののけ姫」をご覧になったことはあるだろうか。
たたら製鉄について、かなり詳しく描かれている。
たたら製鉄は、日本独自の技術であり、川が多く砂鉄の産出量の多い、
山陰地方に適していた。
たたら製鉄は永年に亘り、わが国の鉄生産を支えてきた。明治になって西洋製鉄技術を
導入されたことはご存知かと思うが、実は日清・日露の戦争を支えたのは、
たたら製鉄であり、まだ西洋製鉄技術ではなかった。
幕末という時代以降の戦争が鉄の需要を拡大し、近藤家の業容を拡大することに
なるのである。
そして、軍事需要は近藤家の経営を翻弄することとなる。


次回:2017年3月15日 掲載

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